今日のテーマは、自分がどこにいるのか場所によって働きが変わるという脳の海馬という部分の性質を応用して、受験勉強に不可欠な記憶力を簡単にアップさせられる・・・という脳医学の研究を応用した勉強テクニックのご紹介です。
脳医学の研究で、新鮮に感じる場所に行くと、脳の海馬は一時的に興奮状態になり、記憶力が増強される性質を持っているという仕組みが解明されました。
この脳が持つ性質は、受験勉強にも大いに活用できます。
それがノマド(遊牧民)のように勉強場所を変えて暗記をする「ノマド勉強法」です。
どうして「ノマド勉強法」は効率よく覚えられるのか?
どうして覚えたことをいつまでも忘れないのか?
受験生を専門に診療する心療内科医として経験と専門知識をもとに、「ノマド勉強法」の極意を伝授しましょう!

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脳の海馬は新鮮な場所で記憶力を上げる!
脳の海馬が記憶力を高める効果は、どなたも、今、この瞬間に実感できます。
思い出してください。
あなたは、小学校の修学旅行で、どこに行き、どんな体験をしましたか?
意外と覚えているのではないでしょうか。
たとえば私は、伊勢に行きました。
京都の公立小学校は、だいたい伊勢でしたね。
ちなみに、伊勢の小学校では、修学旅行は京都に来ていたようです。
で、大事なのは、そのときのエピソードの記憶です。
私は、赤福餅をノドに詰まらせたことや、夜中に枕投げをして先生に怒られたことをはっきり覚えています。
あなたも、修学旅行のことは、意外と覚えているんじゃないでしょうか?
まあ、楽しかったということもあるのでしょうが、初めての場所で、とっても新鮮に感じたために、脳の海馬が興奮しやすくなっていた効果もとても大きいのです。
海馬には、場所ニューロンという神経細胞があり、常に自分の位置を認識しています。
そして、自分が今、いつもとは違う場所にいるのだと認識すると、海馬全体を興奮状態に変え、これによって記憶力を大幅に高めるのです。
こうした脳の性質は、偶然に身についたものではありません。
生きていく上で、とっても必要な能力だから、人類は進化の過程で獲得していったのです。
新たな場所は、危険かもしれないですよね。
新しい場所にいる時は、周囲の情報をしっかりと記憶し、二度と近づかないようにするのがベストです。
また、何か必要性があって近づいた場合は、危険だという記憶を思い出して警戒する必要があります。
逆に、新たな場所は、食料が取れる素晴らしい場所かもしれません。
この場合も、しっかり記憶にとどめておいて、何度も何度も訪れて、おいしい思いをしたいものです。
危険の回避や食料の確保は、勉強とは無縁だと思っている人が多いでしょうが、脳科学的には間違いです。
もともと、ホモサピエンスとしては、危険の回避や食料の確保のための知識を記憶するのが、本来の勉強だったのです。
だから脳は、こうした大切な情報の記憶の効率を上げるために、海馬の構造や機能が設計されているわけです。
同じ場所でのマンネリ勉強が効率を下げる!
受験勉強は、本来はこうした用途である脳の機能を、いわば流用するような形で行っている、脳科学的には実はイビツなタスクなのです。
こうした脳の本質を理解した上で、脳の性質に合わせた勉強方法を選択しないと、効率は上がりません。
にもかかわらず、多くの受験生は、いつも同じ場所で勉強することになっているでしょう。
これが、脳をマンネリ化させ、海馬を休止させてしまっているのです。
だから、頑張って長時間にわたって勉強しているのに、その割にはたいして覚えられていないわけです。
ご自宅の中でできる「ノマド勉強法」とは?
やるべきことは、脳の本来の用途から離れている受験勉強を、本来の用途の勉強に近づけて記憶することです。
具体的に言うと、記憶力を高めるには、いろいろ工夫して、新たな勉強場所を見つけるべきだということです。
そこで私は20年ほど前に、勉強をする場所を固定せず、色んな場所をすることを「ノマド勉強法」と名付け、著書やTV・ラジオを通して提唱しています。
「ノマド」というのは遊牧民という意味で、最近では遊牧のように勉強場所を変えていくという意味でも使われています。
残念ながら、後から生まれた「ノマドワーキング」(仕事場所を固定しないこと)のほうが流行語になり、「ノマド勉強法」の知名度はイマイチですが・・・。
勉強場所を変えるために、いろんな図書館に出かけて勉強するのもとてもおすすめで、「図書館クルージング勉強法」と名付けて推奨しています。
ただし、都会でなければ、少し移動しただけで、いろんな図書館に行けるという受験生は、そんなに多くはないかもしれません。
でも、同じことがご家庭の中でもできるのです。
普段は勉強しない居間のテーブル、家の玄関、トイレの中・・・。
さがせば、脳の海馬に新鮮な刺激を送れる勉強場所は、ご家庭の中にもいっぱいあります。
しかも、やってみればわかりますが、意外なところほど、効果は大です。
だって、玄関で勉強なんて、生まれてこの方、一度も経験したことはないはずです。
だから、脳にとって、とっても新鮮な刺激となるのです。
さらに、意外だな・・・と思っただけで、脳の扁桃体が刺激を受け、隣の海馬を刺激してくれるので、二重に記憶力がアップするわけです。
見つけてみては、どうでしょう!
受験ストレス性記憶障害(Stress-induced Memory Impairment)とは?
ただし、新鮮な場所で勉強しても記憶に残らないという人は、受験ストレスで海馬の機能が低下している可能性が極めて高いです。