ケアレスミスは、もったいない失点であるのは当然です。
ただし、問題はそれだけでなく、ケアレスミスは、脳がストレス性の機能低下を起こしていることを示すSOSサインとしての性質も持っているのです。
ですから、ケアレスミスのパターンを知れば、ケアレスミスが減るうえに、脳の高次認知機能が高まる結果、学力や問題の解答能力全体が向上するため、受験には二重に役立つわけです。
さらに、スマホを使いすぎることによって脳が機能低下を起こすのですが、その場合に特有に見られるケアレスミスのパターンがあることもわかってきました。
ケアレスミスは、受験生の脳の状態を示すリトマス試験紙だといえます。
ケアレスミスが教えてくれる脳のSOSサインをしっかりと読み解き、志望校への合格をつかみ取りましょう。
受験生を専門に診療している心療内科医としての経験と専門知識をもとに、その具体的な方法を分かりやすくご紹介します。
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日常生活でケアレスミスが増えたら?
学校に持っていく提出物を忘れてしまった・・・。
塾に行ったのに、ノートを忘れていた・・・。
受験生の日常生活で、このようなケアレスミスが増えたと感じたら、親御様は放置してはいけません。
志望校への合格が危機にさらされている脳の赤信号だと受け止めてください。
そして、改善のための行動に、即、移しましょう。
まず、模擬テストをチェック!
受験生が日常生活でケアレスミスが増えたら、親御様が、まず行うべきことは、模擬テストをチェックしてあげることです。
多くの場合、試験を受けたときも、ケアレスミスを連発してしまって、大幅に失点しているはずです。
多くの親御様が成績表の点数と偏差値だけを見るようですが、これでは不十分です。
成績が悪かったとしても、単なる勉強不足が原因なのか、ケアレスミスが原因なのかは、点数や偏差値だけでは判断できません。
赤ペンで採点された答案用紙のほうも、しっかり目を通してチェックしてあげましょう。
受験生と一緒に答案用紙をチェック!
「模擬テストの答案用紙を見ても、わたしには、さっぱりわからない・・・」と受験生の親御様はお感じになったかもしれません。
確かに、大学受験の場合、ご自分の専門領域以外の科目の問題は、通常、親にはわからないものです。
また、そもそも親は、模擬テストを受けたわけではないので、答案用紙を見ただけでは、ケアレスミスかどうかは判定できません。
では、親はどうしたらいいのでしょうか。
ぜひ、模擬テストを受けた受験生と一緒に、答案用紙をチェックしてあげてください。
ケアレスミスで失点するというのは、受験生本人にとっても、とても悔しいことです。
その一方で、頭が悪いといったプライドに関わることではないので、ご本人が隠そうとすることは、まずありません。
判断基準は常識で大丈夫!
「ここはケアレスミスで、解答欄を間違っちゃった!!!」
「ここは、ケアレスミスで計算を間違っちゃった!!!」
模擬テストの答案用紙を前にして受験生に尋ねると、このように次々と教えてくれるはずです。
親がやるべきことは、「1箇所くらいのケアレスミスは誰でもあることだ・・・」、「4箇所もケアレスミスをするのは尋常じゃない・・・」などと、ごく当たり前の常識で判断してあげるだけでいいのです。
脳や心に何らかのトラブルがあり、それによってケアレスミスが増えている場合は、受験生本人としては、直ちに改善しないとダメだという当たり前のことに気付かないことが多いのです。
また、たとえ、こうしたことに気づいたとしても、ただ焦ってしまって気持ちが空回りしてしまい、かえって状況を悪化させてしまうこともよくあることです。
だから、親が、バランスの良い判断力で、検討してあげることが必要なのです。
ケアレスミスの影に脳と心のトラブル
受験生がケアレスミスを頻発する場合、脳と心に何らかのトラブルを抱えている場合が大半です。
これを解決しない限り、根本的な解決にはなりません。
入試の日程が近づいて受験ストレスが増してくると、多くの場合、ケアレスミスがさらに増加してしまいます。
また、イライラする、無気力になる、不眠になる、逆に過眠になって朝起きられなくなる・・・などなど、うつ症状が出てくることも少なくないのです。
逆に、しっかりと脳と心のトラブルを治しておくと、ケアレスミスは自動的に減ってきます。
その結果、模擬テストの点数も必然的に上るので、現在の判定より1ランク、あるいは2ランク上の大学に合格できる可能性もあります。
精神論を押し付けると悪化する!
親が最もやってはいけないことは、「もっと集中して問題を解かないとダメじゃないか!」といった、精神論を受験生に押し付けることです。
ケアレスミスは、受験生にとって、とても悔しいことなので、親に言われなくても、受験生は受験生なりにケアレスミスをしないように注意して問題を解いているのです。
でも、脳と心にトラブルを抱えている場合は、ケアレスミスをなくそうと思ってもなくせない状況に追い込まれているのです。
そんな苦悩の中で、集中して問題を解けと言われると、受験ストレスが悪化し、イライラが爆発するか、落ち込んでしまうか、どちらかになってしまうだけです。
原因は脳の背外側前頭前野の機能低下
ケアレスミスの原因が脳の不調にある場合、特に多いのは、脳の背外側前頭前野と呼ばれる部分が機能低下を起こしているケースです。
この部分は、脳医学で「注意持続力」と呼ばれる一種の集中力を生み出すプロセスの中で重要な働きをしています。
この背外側前頭前野が機能の低下を起こすと、必然的に問題を解くという注意力を持続することができなくなり、ケアレスミスを連発することになるのです。
実際、私のクリニックでCPTと呼ばれる注意持続力の専門の検査を行うと、ケアレスミスが増えた受験生は、ほぼ全員、CPT の検査結果のスコアに何らかの異常が出てきます。
スマホの使いすぎで生じるCPTの異常!
ケアレスミスが増加している場合、CPT の検査結果のスコアが全体的に悪化している受験生も多いのですが、全体のスコアは悪くないのに、ところどころで注意持続力が瞬間的に低下しているケースも、最近、増えてきています。
どういうことか、わかりやすく単純化して説明すると、基本的には集中力は低下していない・・・。
でも、たまに、たった数秒間だけですが集中力がストンと低下することがある・・・。
この場合、その数秒間の間に集中してケアレスミスをしてしまうのです。
しかも、その瞬間だけは注意持続力が低下しているので、本人はそのことに気づくことができないのです。
だから、今回の模擬試験はそこそこできていたかな・・・と思っていても、採点したら悲惨な結果だった・・・ということが起きるわけです。
原因として多いのは、普段からスマホを使いすぎていて、脳が受動的な刺激に対応する癖がついてしまい、能動的に対応できる持続時間が短くなっているということです。
この状態を放置していると、やがて、集中力がたまに低下してケアレスミスをするだけではなく、集中力がコンスタントに低下してそもそも問題を解けなくなってしまうことが多いので、注意が必要です。
脳の扁桃体の暴走も原因に!
一方、受験生の心にトラブルがあってケアレスミスが増えている場合は、脳の奥の方にある扁桃体という部分が過剰に働いているケースが多いのです。
扁桃体は、不満な感情や不安な感情を作り出すため、この場合は、ご家庭での日常生活でも、イライラしたり、不安で落ち込んだりしやすいのが特徴です。
「単なる気の持ちようだ」と軽視する親御様も少なくありませんが、この場合も、入試の時期が近づいてくると、通常、扁桃体の暴走は悪化するため、放置するのはとても危険です。
ケアレスミスの対策については、こちらのページで誰でも簡単にできる14の対策をご紹介しています。
このうち、ご自分の脳の状態に合致している方法を5つほど実践すると、少なくとも試験のケアレスミスは、半分以下に削減できます。
また、脳がトンネルヴィジョンという状態になっているためにケアレスミスをしてしまうことも多く、この場合はこちらの動画解説がとても役立ちます。
最新の脳医学で志望校へ合格を!
脳の背外側前頭前野や扁桃体の活動に何らかの異変がある場合、最新の脳医学に基づき、脳の働きを改善することが、志望校への合格を勝ち取る最短の道です。
そのため、私のクリニックでは、「早期合格コース」という専門の診療プログラムを設けています。
詳しくはこちらのページをご参照ください。
この専門の診療プログラムの中で、専門の脳医学とメンタル医学にもとづいて、試験の答案用紙を分析するという取り組みも行っています。
実は、専門的な観点から答案用紙を分析すると、ケアレスミスだけでなく、さまざまな脳のSOSサインが読み取れるのです。
これは志望校への合格を勝ち取る上でとても有益です。
ぜひ、以下の解説もお読みください。
Assessment of Examination Scripts

✓ 模擬テストの答案用紙を最新の脳医学やメンタル医学の知見を用いて科学的に分析すると、受験生の脳が試験の最中にどのように働いているのか把握でき、それに合わせて対策を取ることで受験生の脳が持つ潜在能力を最大限に引き出すことが可能となります。
✓ ①答案の構成における異常、②文章における不自然な記述形式、③文字に現れる脳機能の状態など、5つの項目について模擬テストの答案用紙を脳医学の観点から分析をすると、試験を受けているときに受験生の脳がどのように働いているのか科学的に把握できます。
✓ 模擬テストでケアレスミスがどのような脳の機能の問題で生じたのかを分析し、脳のストレス耐性の限界など要因を明確化して予防策を実践すると、それだけで平均して70%のケアレスミスを削減することが可能です。
✓ 自宅で勉強しているときと、会場で試験を受けているときでは、脳内にある扁桃体や前頭前野を中心に脳の働き方が根本から異なっており、これに対する対策が不十分だと、学力は高いのに入試に落ちるという悲劇が起きます。
✓ 答案用紙を解析して得られた5つの項目のデータをもとに、AmosやSPSSといった解析ツールを用い、試験に特化した光トポグラフィー検査のデータと組み合わせて共分散構造分析にかければ、脳のそれぞれの機能を改善させる方法が浮き彫りになります。
模擬テストの答案用紙は、試験中の受験生の脳機能を診断する上で、宝の山だと言えます。
受験うつ・受験パニック・受験不眠・受験恐怖症・・・。
これらは、受験生に急増しているご病気ですが、こうした症状は例外なく模擬テストの答案用紙に現れます。
脳機能に何らかのトラブルを抱えると、単に成績が悪くなるだけでなく、回答の仕方にも、独特なクセが現れます。
それを丁寧に読み取っていくことで、受験生の脳機能に何が起こっているのかが分析できるのです。
これは、志望校への合格を勝ち取るために、脳のどの部分の問題を解決すべきなのか、どの脳機能を改善すべきなのか、とても役立つ情報を教えてくれます。
受験生の脳機能が試験の最中に、どのように働いているのか、直接計測できれば、合格を勝ち取る上で決定的に有利になります。
実際、これについては開発が進んでいます。
当院の院長が理事を務める人間情報学会では、受験生が試験を受けている真っ最中でも、生体情報を計測し続けることができる超小型の装置の開発に成功しました。