脳の海馬にあるプレースセルの驚くべき機能とは?
記憶力をアップさせるカギとなるのが、プレースセルと呼ばれている神経細胞です。
もう一度、冒頭の図をご覧ください。
記憶を作り出す最初のステップは、脳の海馬です。
ここにプレースセル(場所細胞)という特別な神経細胞があり、これが場所の認識を作り出しているのです。
では、どうして、プレースセルのようなものが、記憶の中枢の海馬にあるのでしょうか?
その理由は、そもそも、記憶というものは、人間が生きていく上で、場所の情報をセットで覚えておくことが重要だったからです。
プレースセルはネズミも犬も持っているので、正確に言うと、哺乳類が生きていく上で必要な記憶のシステムだということなんです。
具体的には、食べ物が取れる場所とか、危ない場所とか・・・ですね。
だから、場所を認識するプレースセルは記憶の中枢の海馬の中に設けられ、場所とセットで認識された情報を優先的に記憶に残す仕組みを構築したわけです。
生きていく上で、とっても合理的ですね!
だから、受験勉強の知識も、場所とセットで覚えると、暗記しやすいわけです。
古代ギリシアの法則が2500年後に脳科学で実証!
実は、歴史上、このことに最初に気づいたのは、古代ギリシア時代のシモニデスという詩人だったんです。
彼は、後に「シモニデスの場所法」と呼ばれる暗記法を考案しました。
一言で言うと場所と関連つければ記憶に残りやすいというものですが、それが2500年以上たって、脳科学で証明されたわけです。
シモニデスはすごい!
あと、歴史のロマンも感じますね。
暗記したいことを自宅のありとあらゆるところに貼っておき、その場所とセットで暗記!
残念ながら「シモニデスの場所法」は長期記憶になりにくいので、受験勉強には向きません。
では、プレースセルを積極的に活用して受験勉強の暗記の効率をあげるには、具体的にはどうすればいいのでしょうか?
最も効率がいいのは、暗記したい事項を紙に大きな字で書いておき、家のそこら中に貼り付けておくことです。
こういう紙をトイレに貼り付けている受験生は、けっこう、いると思いますが、それだけでは足りません。
廊下も、脱衣場も、ベッドの真上の天井も、紙が貼り付けられる場所があれば、片っ端から貼り付けるのがベストです。
そして、記憶力を高めるためにカギになるのが、どこに貼り付けたのか、その場所と一緒に紙に書いた内容を記憶するということです。
そうすると、海馬のプレースセルの作用で、効率よく暗記できます。
試験中は場所と一緒に暗記したことを思い出すと、スイスイ解答できる!
プレイスセルのおかげで、場所とセットにすると海馬に記憶が保存されやすいわけですが、逆に脳に保存された情報を思い出すときも、場所とセットにすると思い出しやすい…という法則があります。
試験中に、覚えているはずなのに思い出せないことって、けっこう、ありますよね。
こういう度忘れって、試験では大きな落とし穴になります。
仮に、頑張れば思い出せたとしても、それだと、貴重な解答時間を消費してしまって、時間切れで失点してしまいます。
そうならないように、試験の最中に思い出す時に、まず、家のどこに貼ったのか場所を先に思い出すと、その場所とセットで記憶された暗記条項がスイスイ思い出せます。
受験ストレスによる記憶力低下は入試の致命傷になる!
ただし、場所とセットにしても暗記できない・・・、あるいは場所とセットにしても思い出せない・・・といったことが起こった場合には、脳内で受験ストレスによる記憶力の低下を起こしている危険性があります。
この場合は、ストレスホルモンのコルチゾールが、記憶の中枢の海馬にダメージを与えているんです。
その結果、記憶を作り出す海馬の新生細胞の数が減少し、さらに一個一個の新生細胞の機能も低下しています。
だから、早く対処をしないと、記憶力の低下は回復不可能になってしまいます。
以下の受験ストレスによる記憶力の低下についての解説記事も、ぜひ、ご一読ください。