今日のテーマは、前向きなメンタルをもたらすための条件などを専門に研究する「ポジティブ心理学」と呼ばれる分野の研究結果を応用して、勉強のヤル気を倍増させる方法のご紹介です。
物事をポジティブに考えるのか、ネガティブに考えるのか?
脳は無意識のうちに、「フレームワーク」を構築しています。
勉強などのヤル気は、この「フレームワーク」次第で、大きく変わってくることがわかってきました。
このメンタルへの効果を積極的に利用して、受験勉強をバリバリ進めていこうというのが、「ポジティブフレームワーク勉強法」です。
勉強のやる気が出てこなくて困っているという受験生の方は、ぜひ、取り入れていただきたいです。
「ポジティブフレームワーク勉強法」は、具体的には、何をどのようにすれば取り入れられるのか?
受験生を専門に診療している心療内科医としての経験と専門知識をもとに分かりやすく解説します。
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ストレスが増える受験期に、突然うつ症状を発症する人が急増している。うつで人生を狂わさないために、受験生本人や家族ができることは何か。受験生専門外来のがストレス管理や効率の良い勉強法を解説する。
勉強のやる気が出ない原因は「脳内の葛藤」
勉強などのヤル気が起きないのはどうしてなのか、心理機構や脳のストレス耐性の観点から分析が行われています。
その結果、やる気が出ない人は、実は、ある葛藤が生じており、それが脳内で意欲の中枢の働きを低下させているということがわかってきました。
やる気を奪う葛藤の正体は、「ネガティブフレームワーク」による葛藤なのです。
ヤル気を奪う「ネガティブフレームワーク」とは?
「ネガティブフレームワーク」とは、どういうことか?
また、その正反対である「ポジティブフレームワーク」とは、どういことか?
こちらの図を使って説明しましょう。
たとえば、数学の問題集を始めようとするとき、脳内では無意識のうちに、問題集を解くことのメリットを計算しているのです。
問題演習をやったところは、試験で出題された場合、解ける確率は80%くらいだろう・・・といった具合です。
このとき、80%も解けるようになる・・・とポジティブに認識するのが「ポジティブフレームワーク」です。
一方、20%は解けないんだ・・・とネガティブに認識するのが「ネガティブフレームワーク」です。
フレームワークでヤル気が変化!
「ポジティブフレームワーク」も「ネガティブフレームワーク」も、どちらも、論理的には正しい認識です。
というか、同じ内容を表現を変えているだけですよね。
なのに、ヤル気に与える影響は、まったく異なるということが、データとして明らかになっています。
これが、勉強のやる気を高める上で大事なポイントなのです。
また、「ネガティブフレームワーク」で物事を考えるたびに、脳内で意欲の中枢が働きにくくなるという作用が働くこともわかってきました。
つまり、「ネガティブフレームワーク」が繰り返されるたびに、よりやる気が湧きにくい脳に変わっていくということです。
落ちる不安との化学反応で意欲が崩壊!
特に受験勉強の場合は、頑張って勉強しても入試に落ちるかもしれないという不安感が常に伴います。
この恐怖心が「ネガティブフレームワーク」と化学反応を起こすと、受験勉強のヤル気が強力に抑制されてしまうのです。
しかも、脳内で「ネガティブフレームワーク」がストレスも生み出します。
そのため、疲労感も高まりやすく、ますます精神的な負担が増すので、勉強嫌いの心理を生み出す作用も生じるわけです。
勉強のヤル気を奪っている元凶だから、このような心理の罠にハマってはいけません。
ポジティブフレームワークに変える心理訓練!
こうした現象に対する対策として効果があるのが、ポジティブフレームワークになるように心理訓練をしながら勉強することです。
これを繰り返していると、やがて、意識しなくても自然にポジティブフレームワークで物事を考えられるようになります。
そうなると、無理して気合を入れなくても、ごくごく普通に勉強のヤル気が高まっている状態が持続するわけです。
受験勉強でこうしたマインドを身に着けたら、社会に出たあとも仕事のヤル気が高まるから、二重三重におすすめです。
ポジティブフレームワークへの変換の仕方!
例えば、ケアレスミスをして試験の点数が下がってしまったとしたら、このままだとネガティブフレームワークなので、勉強の意欲が消えてしまいます。
そこで、これをポジティブフレームワークに変換しましょう。
この場合は、こうなります。
「ケアレスミスさえしなければ、試験はもっと高い点数が取れる」となります。
けっこう簡単ですよね。
ネガティブフレームワークに潜む脳の不調!
ただし、単なる心理的な問題ではなく、脳の不調によってネガティブフレームワークだらけになっている受験生もいます。
あなたは、大丈夫でしょうか?
この場合は、意識してポジティブフレームワークに切り替えようとしても、すぐにネガティブフレームワークに戻ってしまいます。
脳の扁桃体と呼ばれる部分で暴走状態が生じ、本人の意思を超えてネガティブフレームワークで物事を考えてしまうのです。
こういう段階に至ると、それはもう、心理の問題ではなく脳の問題です。
あわせて、以下の症状が出ている場合は、特に注意が必要です。
なんだか、心がきつい・・・。
めんどくさくて、嫌な気分になる・・・。
無理に「頑張れ」と自分を励ますと、なんだか物哀しい気分になる・・・。
心当たりのある方は、一刻も早く、改善が必要です。
ドーパミンが枯渇し、脳の側坐核が刺激を受けにくい状態になっている可能性が高いのです。
この場合、ドーパミンで側坐核を刺激し、勉強のヤル気を回復させる方法が、合格を勝ち取る上で有効です。
以下の解説を必ずご参照ください。
このページの要点は?
✓ 受験ストレスが脳の機能に障害を与えるため、ヤル気の低下を生み出します!
✓ 勉強のヤル気は、脳の「側坐核(Nucleus accumbens)」という部分が中心になって生み出されます!
✓ ストレスは、脳の「背外側前頭前野(DLPFC)」の機能を低下させることで、ヤル気の喪失を生じさせます!
✓ 「背外側前頭前野」への磁気刺激によって、勉強に対するヤル気の急激な回復を図ります!
ポイント!
受験勉強などのヤル気は、脳の奥深い部分にある「側坐核(Nucleus accumbens)」と呼ばれる部分が中心になって生み出される仕組みになっています。
このため、「側坐核(Nucleus accumbens)」は意欲の中枢と呼ばれることもあります。
試験で良い点数を取ると、ますますヤル気が出てきますね。
そんな経験が、どなたもあると思います。
良いことがあると、A10神経が快感ホルモンと呼ばれるドーパミンを分泌するため、気持ちよくなるわけです。
同時に、A10神経は「側坐核」にもドーパミンを分泌して、活動を活発にしてくれます。
ヤル気がさらに高まるのは、こうして起こる脳の生理的な現象なのです。